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人は誰しも、決して孤独ではない。様々な絆に心が「温かく」なる映画

温育カルチャー

心を揺さぶるSF×ヒューマンドラマ

「1番好きな映画は何?」

そう聞かれると、順位をつけられずについ何作も答えてしまうことがありますが、必ず挙げるのが『コンタクト』。監督のロバート・ゼメキスといえば『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズや『フォレストガンプ/一期一会』などで数々とヒット作品を生み出した人物としてとても有名ですが、本作はあまり知られていません。地球外生命体、哲学的な問いなどのキーワードから、娯楽SF映画や宗教映画と間違えられやすいのですが、本作は宇宙探検を通して描かれる未曾有の群像劇。数多の名言に溢れ、観る人の心を揺さぶる壮大な人間ドラマなのです。

多種多様なテーマの中に込められた2つのキーワード

科学と宗教、頭脳と心、地球外生命との遭遇、生命、人類の存在理由、恋人たちの物語……本作には様々な要素が盛り込まれています。そのため、本作を観た人たちの着眼点はそれぞれ異なり、色々な感想・見方・感じ方があると思います。今回のレビューはあくまでもわたし一個人の感じ方や感想と捉えていただければ幸いです。

前述したように様々なテーマを内包した本作ですが、最初から最後まで一貫して伝えようとしているキーワードは2つ。1つ目は『信じることの大切さ』。宇宙を信じる科学者、神を信じるテロリスト、神よりも愛を信じる宗教学者など。登場人物それぞれが自分の信じるものをもっています。

冒頭、主人公・エリーはアレシボ天文台近くのカフェで宗教学者のパーマー(マシュー・マコノヒー)と出会い、お互いに惹かれ合います。しかしパーマーが神を信じていることを語ると、幼い頃に父を亡くした経験と実証主義から神を信じないエリーは哲学用語『オッカムの剃刀(「単純な説明ほど、正しいものである」とする指針)』を例に一笑に付します。しかし物語の最後、科学者のエリーが大衆の前で話す内容は、この時のパーマーの言葉と重なっていました。科学者と宗教家。正反対の位置に立つ両者ですが、2人の違いは、救いを求める対象が、まだ発見されていない『科学』か『神の存在』か、それだけなのです。信じるものが科学なのか宗教なのか、夢なのか愛なのか。その違いがあっても、信じる思いが強ければ強いほど、世界を動かし、未来を変えるだけの力があります。ただしそれは理屈では説明できないため、第三者や反対の考えを持っている人に信じてもらうことは難しいのです。そのことを代表するような会話があります。

エリー「神がいるという証拠がなければ信じることはできないわ」

パーマー「……君はお父さんを愛していた?」

エリー「もちろんよ」

パーマー「証拠は?」

エリー「……。」

私たちは決して独りじゃない

本作の要となるキーワードは『孤独』。その答えが、本作が伝えようとしている2つ目の『人は誰しも、決して孤独ではない』ということ。

エリーは地球人類としての孤独、一人の女性としての孤独を感じています。その孤独を生み出したきっかけは、幼いころに最愛の父を亡くしたこと。父が亡くなり、身寄りがなくなった彼女は科学に没頭し、周りからはSFの世界で非現実的だと馬鹿にされながらも父と共に信じ続けた地球外生命体の存在を追い求めます。例え好意をもった男性に言い寄られても、ほのかな感情さえもふりきり、仕事にのめり込む。その一心不乱な姿は、まるで自身の孤独感を埋めるためでもあり、唯一の原動力のようでもありました。孤独の象徴の様な宇宙に想いを馳せたエリーは、そこに自分の居場所を作ろうとしたのでしょう。

孤独を感じていたのはエリーだけではありません。宗教家のパーマーも同じです。彼は人類が孤独感を強めていることを早い段階から危惧し、寄り添い、宗教家として大勢から支持を得ます。しかし真の意味では誰一人、彼の言っていることや体験したことを理解できる者はおらず、愛する女性とも分かち合えない。エリーとはまた違った形で『孤独』を感じている人物でした。このように『孤独』というキーワードを示唆するシーンや台詞が、本作の随所に出てきます。

『孤独』。これは決して映画内に限ったことだけではなく、現実の私たちにも当てはまるキーワードではないでしょうか。形や理由は違えど、孤独感や疎外感に苛まれ、辛く悲しくなることが誰しもあると思います。本作はそんな時にぜひ観ていただきたいのです。タイトルの『コンタクト』は地球外知的生命体との“接触”を指す意味と同時に、人間同士の“絆”を指す意味でもあります。子供の頃から誰よりも強い孤独感を感じ、そこから少しでも抜け出そうともがき続けたエリー。物語の終盤、彼女は自身のある体験を通し、人と人との真の繋がりとは形を越えた互いの理解にあることに気づきを、長年苦しめられた孤独感から抜け出します。どんな経験や出会いが彼女を孤独から救ったのでしょうか?

彼女は最後に大衆の前で強く訴えます。

私は改めて気付いたのです。我々が如何にちっぽけな存在であるかを。また如何に貴重であるかも。私は知ったのです、我々は、より大きなものの一部である事を。我々人類は決して孤独ではありません――。

『信じることの大切さ』、『人は誰しも、決して孤独ではない』という誰もが理解できる単純で奥深いメッセージは、いつまでも変わらずに観る人の心に響き勇気づけることでしょう。


あらすじ

地球外知的生命体探査プロジェクトの一員エリナー・アロウェイ博士(愛称エリー)(ジョディ・フォスター)は大人になっても地球外生命体の存在を信じ続け、プエルトルコのアレシボ天文台で働いていた。「私達は何者なのか。なぜ私達はここにいるのか――」幼い頃からの問いの答えを宇宙に探し求め情熱をもって仕事に打ち込むエリーだったが、周りからは変人扱いされ、上司であるドラムリンからも嫌味を言われる日々。そしてついには先の見えないプロジェクトに対し元々懐疑的だった彼によって、エリーたちの研究は打ち切られ、アレシボ天文台を退去する事態に陥る。エリーは独自の資金源を求め、各企業を渡り歩き、ついに大富豪ハデンというスポンサーを得ることに成功する。そしてニューメキシコの超大型干渉電波望遠鏡群で探査を再開したある日、エリーはついに琴座のヴェガから断続的に発信し続けられる有意な電波信号を受信。信号を解析すると、不鮮明な映像からヒトラーの映像が浮かび上がる。この信号の意図がつかめない中、マスコミによって公となり、ドラムリンや政府が強引に介入。ヴェガからの信号は人類に大きな衝撃を与えることとなり、次第にエリーの思惑とは関係ない方向へと事態が進行していく……。

前回の記事はこちら →必死に生きるか、必死に死ぬか。生きる希望に心が「温かく」なる映画『ショーシャンクの空に』

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著者名:yukigary
父母の影響で小さい頃から洋画を観まくる。爆発する作品は大体好き。俳優のゲイリー・オールドマンが3度の飯より好き。
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